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犬の前十字靭帯断裂 犬の前十字靭帯断裂とは?病態と原因について 犬の前十字靭帯断裂は、膝関節の中に存在する靭帯のひとつである前十字靭帯が断裂してしまう病気です。 前十字靭帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯であるため、断裂することで、脛骨が正しい位置からずれてしまいます。 原因としては、加齢性および変性性の変化が靭帯に生じ、これに何かしらの力(日常的な散歩や階段ののぼりおりなど、軽微な運動で生じることもある)が加わることで断裂します。 スポーツなどの外傷により生じるケースもまれにあり、そのほとんどが1歳未満の若齢犬となっています。 片側の前十字靭帯を損傷した場合には、将来的に両側に生じることも多いです(12.7~58.6%) また、前十字靭帯の断裂が生じた犬の半数以上において、半月板(大腿骨と脛骨の間にある軟骨)損傷も生じます。 好発品種としては、
などがあげられますが、トイプードルやチワワなど、犬種を問わず発生します。 犬の前十字靭帯断裂の症状 部分断裂や完全断裂、急性と慢性など、状態や時期により、さまざまな程度の跛行を生じます。 膝蓋骨脱臼と同様、足を気にするようになりますが、完全にあげてしまうケースが多く見られます。 また、関節液の増量により、膝関節の屈曲制限が生じ、患肢が外側に流れるという特徴もあります。 犬の前十字靭帯断裂の診断方法 膝蓋骨脱臼と同様、診断方法は、触診とX線検査にて行います。 超音波検査やMRI検査、関節鏡検査を併用することもあります。 損傷直後の症例においては、膝関節周囲に触れたときに、疼痛や熱感が認められます。 触診においては、脛骨前方引き出し試験と脛骨圧迫試験が重要であり、脛骨が前方に動くことを確認した場合には、前十字靭帯の断裂が示唆されます。 また、膝関節を屈伸させたときにクリック音(パキパキ、ポキポキといった音)が聞こえた場合には、半月板損傷の可能性もあります。 X線検査では、fatpad sign(関節液の貯留と膝蓋下脂肪体の圧迫により白く見える)や骨棘(骨同士の摩擦や変形により生じる骨のとげ)が認められることもあります。 犬の前十字靭帯に際しては、糖尿病やクッシング症候群、免疫介在性関節炎などが関与していることもあり、これらの基礎疾患の鑑別も重要となります。 犬の前十字靭帯断裂の治療法 犬の前十字靭帯断裂においても、内科的治療法と外科的治療法があります。 内科的治療法(保存療法) 内科的治療としては、関節痛を緩和する目的として、NSAIDsの投与を行います。 同時に、鎮痛補助薬やサプリメントの使用も考慮します。 薬による管理を行っているときには、運動制限や体重管理、環境改善も必須となります。 ただし、内科療法については、あくまでも疼痛管理が治療の目的であり、小型犬の部分断裂以外にはあまり著効はありません。 症状が消失した場合でも、膝の不安定性が改善するわけではないため、膝の変形は手術時と比べて進行することが多いです。 外科的治療法(手術) 外科的治療法の目的は、膝関節の機能の維持をしながら、関節の安定性を再建することです。 内科的治療法を行っても、良好な反応が見られない場合に実施します。 ただ、断裂した靭帯自体を再建する術式はありません。 ![]() 手術法は200以上の術式が存在するほど多岐にわたりますが、大きく分けて、
となっています。 一般的には、外科的治療法を行ったほうが、より早期に回復する傾向にあります。 成功率はいずれの術式においても90%程度となっています。 関節内再建術 関節内再建術は、関節包内で自己筋膜もしくは人工靭帯を用いて、膝関節を安定させる方法です。 損傷した前十字靭帯の代わりに、膝蓋靭帯の一部や大体筋膜、人工靭帯などによって、膝関節の不安定や脛骨の前方変位を改善する手術となります。 大体筋膜紐法、Over the Top法、Over the Top変法、人工靭帯法などがあります。 人においては成績が良好であり、治療のゴールデンスタンダードとされていますが、犬においては、移植した組織が十分な強度を得ることができず、術後成績が良好でない場合も多いです。 関節包外制動術 関節包の外側で、主に固定糸(代用靭帯)を用いて膝関節を安定化させる方法で、Flo関節包外制動術やTightRope法などがあります。 膝関節の制動が良好となる術式ですが、どんな固定糸を用いても時間ともにその強度は低下します。 そのため、膝関節の長期的な安定性は、関節の繊維化に依存することとなるため、高齢や肥満、安静にすることが難しい症例や内分泌疾患のある症例においては、良好な結合組織ができずに、制動不良が生じることもあります。 また、術後経過を良好にするためには、2週間程度の期間の包帯使用と8週間程度の安静が必要となります。 この術式の利点としては、特殊な道具が必要なく、脛骨の内旋を抑制できることです。 成功率が高い(90~95%)ところもメリットとなります。 以下でお伝えする、脛骨骨切りによる膝関節の機能的安定化術とあわせて実施することが多いです。 脛骨骨切りによる膝関節の機能的安定化術 近年、多数の動物病院で実施されており、術後の経過がよいという報告が多い術式です。 脛骨を切り、大腿骨に対する角度を調整する(骨の構造を変更する)ことで、膝関節の安定化を図ります。
などが代表的な手術法です。 前十字靭帯断裂の断裂が生じると、前十字靭帯がとめていた脛骨が前方へ引き出されるようになってしまいます。 そのため、脛骨が前方に出ないように、脛骨の上部の骨を切り、大腿骨に対する角度を調整することで、前方に引き出られる力を緩和する方法です。 これらの方法は、現在最も早期の機能回復をもたらし、予後が良好とされる術式です。 では、以下では、脛骨骨切りでよく用いられるTPLOとTTAについて、より詳しくお伝えいたします。 脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)と脛骨粗面前進化術(TTA) 脛骨高平部を骨切り矯正する脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)と、脛骨粗面の位置を変更することで膝関節の安定化を得る脛骨粗面前進化術(TTA)は、脛骨を骨切りし、骨の構造を変更することで、膝関節にかかる力を変更し、機能的に膝関節を安定化することを目的とした術式です。 TPLO 脛骨の高平部を水平化することで、膝関節への負重時に生じるCrTT(脛骨前方推進力)を減弱させることを目的とした矯正骨切り術です。 CrTTは、TPA(脛骨高平部角度)に比例して大きくなると考えられています。 そのため、TPLOでは、脛骨の近位をドーム状に骨切りし、TPAが緩徐(6.5±0.9°)となるように、脛骨の近位を尾側へ回転させ、負重時に発生するCrTTを小さくすることで、膝関節を安定化させます。 脛骨高平部を直接矯正するため、再現性のある手術の実施が可能となります。 ![]() 構造的に膝関節の安定性を得る方法のため、内分泌疾患や肥満、過度な活動性などで、関節外法後の関節の繊維化が遅延する症例に対しても有効な術式となります。 また、早期機能回復も可能であり、術後の73%が極めて良好、21%が良好という、9割を超える家族が満足を得ているという報告もあります。 TPLOの欠点としては、特殊な器具をそろえる必要があること、またインプラントを使用するため、感染や固定不良の危険性があることなどが挙げられます。 なお、TPLO両側同時実施は、脛骨稜の骨折リスクが8.5~9.6倍増加するなど、合併症の発生率が高くなると言われています。 そのため、起立可能な前十字靭帯断裂においては、片側ずつ分けて手術をすることが推奨されています。 TTA 前十字靭帯断裂によって生じるCrTTを、(脛骨高平部を変位させることなく)脛骨粗面を前進させることで打ち消す方法です。 膝関節に加わる応力は、膝蓋靭帯とほぼ平行であり、膝蓋靭帯が脛骨高平部に対して垂直に位置する場合には、膝関節に加わる剪断力は消失、つまりCrTTが消失し、膝関節の安定化が得られるという理論です。 ![]() CrTTは最大伸展時に最大になり、最大屈曲時に最小になると考えられているため、伸展時(135°)にPTA(膝蓋骨から脛骨粗面へ付着する膝蓋靭帯の角度)が90°となるように変位させ固定します。 ![]() 膝蓋骨脱臼に対応するための、脛骨粗面転位はTTAと同時に行うことが可能であり、膝蓋骨脱臼と前十字靭帯断裂が併発した症例に適応が可能という利点があります。 また、手術による侵襲が低く、TPLOと比較し、大腿骨と脛骨の接触面における関節構造に変化を与えず、手術直後にも関節の動きに制限を加えないこともメリットとなります。 その一方で、まだ新しい術式であるため、長期的な予後に関するエビデンスが比較的少ないことが欠点となります。 通常は良好な機能回復ではありますが、特定の犬種や脛骨の形状次第では、予後に注意する必要があります。 犬の前十字靭帯断裂の術後ケアと予後 手術を行った際には、骨が癒合するまで、ケージレストが必須となります。 前十字靭帯断裂に対する手術は、疼痛レベルが高い手術に分類されるため、周術期にはより厳格な疼痛管理が必要とされます。 マッサージやリハビリなども併用し、十分な歩行能力まで回復するには2~6カ月程度を要します。 なお、内科的治療法で経過をみた体重15kg以上の症例や、半月板損傷が併発している症例では、関節痛や運動機能の低下が慢性化することもあります。 前十字靭帯の断裂を生じた場合には、変形性関節症(OA)を必ず生じるため、生涯に渡るケアが必要となります。 具体的には、体重管理と運動や生活環境の改変、慢性痛の管理(疾患修飾性OA薬やサプリメント投与)が重要です。 太らせないように食事の調整をし、床を滑らない・段差をなくすなど、家のつくりも見直すようにしましょう。 参考資料
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by maple-hospital
| 2025-02-13 20:29
| 前十字靭帯断裂
『愛犬が足をあげている…、引きずっている…』 『ジャンプや段差を嫌がるようになった…』 そんなときには、膝蓋骨脱臼や前十字靭帯の断裂が生じている可能性もあります。 両者は外科的治療(手術)が必要なケースもあり、早期発見・早期治療が重要となります。 以下では、犬の膝蓋骨脱臼と前十字靭帯断裂について、
などを分けてお伝えしています。 自宅でできるケア方法もお伝えしておりますので、愛犬の足に痛みや違和感があるなと感じる飼い主様は、ぜひ参考になさってください。 犬の膝蓋骨脱臼 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?病態と原因について 犬の膝蓋骨脱臼とは、膝にあるお皿(膝蓋骨)が、本来の位置である大腿骨(太ももの骨)のくぼみから外れてしまう病気です。 膝蓋骨のことを英語で『patella(パテラ)』というため、膝蓋骨脱臼のことを単に『パテラ』と呼ぶこともあります。 膝蓋骨脱臼には、内側に外れる内方脱臼と外側に外れる外方脱臼があり、前者はトイプードルやチワワなど小型犬に、後者はゴールデンレトリバーやセントバーナードといった大型犬に多く発生する傾向があります。 発生には遺伝も関与していると考えられており、小型犬に生じる膝蓋骨脱臼の82%が発育期に生じているとの報告もあります。 また、転落や急旋回、交通事故などにより後天的に生じるケースもあります。 中高齢以降においては、前十字靭帯断裂が膝蓋骨脱臼に併発していることもしばしばあります。 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状 犬の膝蓋骨脱臼は、無症状であることも多く、問題なく日常生活を送れるケースがほとんどです。 ただ、痛みや違和感が生じることで、
といった症状が見られることもあります。 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の診断方法 診断方法は、触診や歩行検査、X線検査にて行います。 膝蓋骨の脱臼の程度によって、グレード1からグレード4まで分類されます。
ただ、症状は必ずしもグレードに準ずるわけではなく、低グレードの子においても、痛みが強く出る場合もあります。 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療法 犬の膝蓋骨脱臼においては、内科的治療法と外科的治療法があります。 内科的治療法(保存療法) 薬による治療は、臨床症状がない場合や手術が行えない場合に適応となります。 『脱臼をしている=手術をする』というわけではないということです。 治療の初期には、痛み止め・消炎剤として、NSAIDsの投与を1~2週間程度、また関節軟骨の保護のために注射やサプリメントの投与を行うこともあります。 ほかにも、
といったこともあわせて行います。 足裏の毛のカットを行い、滑りづらくする、また、日常的な散歩により筋力の維持を図ることも大切です。 これらの実施により症状が改善しない場合や跛行が重度なとき、疼痛が頻繁に生じる場合などには、外科的治療が必要となります。 外科的治療法(手術) 犬の膝蓋骨脱臼の外科的治療法としては、以下でお伝えする複数の方法を組み合わせて行います。
なお、犬の場合、一時的に用手にてはめなおしても、すぐに外れてしまうことも多いため、「膝蓋骨脱臼かもしれない…急いではめてもらわなければ!」と急患で受診する必要はありません。 また、飼い主様の自己判断でのサポーターには効果がないだけでなく、かえって悪くなることもありますので、控えるようにしましょう。 犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の術後ケアと予後 手術が適切に行われた場合には、運動機能の改善を望むことができます。 手術した方の足を浮かせて歩くことも多いため(特に小型犬では、3本足での歩行に不自由を感じないため、患肢を使用しないことも多いです)、リハビリやマッサージを行うことで、筋肉量の維持を図ります。 ただし、軟骨組織の損傷が著しい症例においては、関節炎に移行することもあります。 また、術後数年して、前十字靭帯の損傷が生じるケースもあるため、定期的な受診が必要となります。 #
by maple-hospital
| 2025-02-13 20:26
| 膝蓋骨脱臼
膵炎とは? – 早期発見が重要な犬・猫の膵臓の疾患膵炎(すいえん)とは?膵炎は、膵臓の炎症を引き起こす疾患で、犬や猫を含むペットでもよく見られます。膵臓は、消化酵素を分泌する重要な臓器で、食物の消化を助ける役割を持っています。膵炎が進行すると、消化酵素が膵臓内で活性化され、膵臓自体を攻撃し炎症を引き起こします。この状態は、非常に痛みを伴い、深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期の発見と治療が非常に重要です。 膵炎の症状膵炎の症状は犬や猫によって異なりますが、以下のような症状が見られることがあります。
特に、急性膵炎では急激に症状が現れることが多く、慢性膵炎の場合は症状が緩やかに進行することがあります。 膵炎の原因膵炎の原因はさまざまで、以下のような要因が関係しています。
膵炎の診断方法膵炎の診断には、獣医師による詳細な問診と身体検査が必要です。加えて、以下の検査が行われることがあります。
膵炎の治療方法膵炎の治療は、早期発見と適切な対応が重要です。主な治療方法は以下の通りです。
膵炎を予防するために膵炎の予防には、以下の対策が有効です。
まとめ膵炎はペットにとって非常に危険な疾患ですが、早期に発見し適切な治療を行えば、回復する可能性が高いです。メイプル動物病院では、膵炎をはじめとする消化器系の疾患に対する専門的な治療を提供しています。ペットの健康に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちがしっかりとサポートさせていただきます。 #
by maple-hospital
| 2025-02-12 22:17
| 腫瘍外科 軟部外科
GradeⅡの膝蓋骨脱臼手術後のレントゲン写真です。
![]() ![]() 膝蓋骨脱臼(パテラ)と診断され当院を受診を検討される方へ(飼い主様へ) 当院では手術の相談やセカンドオピニオン等受け付けております。予約制ではありませんが、学会出席や急な出張で院長不在になる場合がありますので できる限りお電話で希望日を問いあわせいただけると幸いです。主治医の先生の紹介がなくても診察いたします。 電話 075-821-1055 午前9時から12時 17時から19時30分 (木曜午後・金曜休み 祝日午後休み) 整形外科疾患の紹介について(動物病院・獣医師の先生方へ) メイプル動物病院では骨折や膝蓋骨脱臼や股関節脱臼,肩関節脱臼などの脱臼、前十字靭帯断裂、股関節形成不全、レッグペルデス、跛行診断など整形外科分野の紹介を受け付けております。 飼い主様に直接お話していただいて来院していただいても結構ですし、お電話いただいてお問い合わせいただいても結構です。 ただ最近患者さんがご自身で調べて来られたのかご紹介いただいて来られたのか曖昧な時があります。 できるだけ電話あるいはメールでご連絡いただけると助かります。 尚他院様から整形外科疾患でご紹介いただいた時(電話・メール等)にはワクチン、フィラリア等予防等整形外科疾患の治療以外は行わず 他院様で予防や整形以外の治療をしていただくように患者様にお話しており、治療経過をあわせてご報告させていただきますので電話等で連絡いただきますと幸いです。 電話 075-821-1055 午前9時から12時 17時から19時30分 (木曜午後・金曜休み) #
by maple-hospital
| 2021-02-06 23:23
| 膝蓋骨脱臼
今日は猫の脛骨・腓骨骨折をALPS5というロッキングプレートで内固定の紹介です。
手術前 ![]() ![]() 術前の計画(digital planninng) ![]() ![]() 多分ですが骨を戻したり切ったり移動したりしてプレートやスクリューを配置できるのは日本では最初かもしれません。(まだ未確認) 多分最低でも京都では初導入だと思います。多分。。。(汗) こんなことも出来ます。前十字靭帯断裂でKYON社TTA手術計画。 ![]() 話は戻って手術中の確認写真 ![]() ![]() ![]() 当院では遠方から骨折手術を目的として来院される方も多いため骨折手術の器具やimplantを各種備えて出来るだけ早く手術して痛みを和らげようと心掛けております。 当院の内固定(ロッキングプレート) KYON社 ALPS ![]() Orthmed社とVOI社のSOP ![]() ![]() スワ社 タイタンロック synthes社 DCP LCP 他数社のプレートを用意 創外固定 IMEX社の創外固定器 ![]() ![]() Inovative Animal Product社のインタロッキングネイル #
by maple-hospital
| 2020-10-03 22:36
| 骨折
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